その4 とにもかくにも着物を見に行ってみる

もう外堀はすっかり埋め尽くされ、後は総攻撃を受けて全軍討ち死にいたすか、もしくは白旗挙げて敵軍に下るか、古井戸に続く抜け道を脱兎のごとく逃げ出すか。


ふ、と右を見ると、もう嬉々として白旗を広げはじめてる友人がひとりおりまして、また左には背中に2本ぐらい白旗刺してしゃがんでる友人がおりました。
なんだ、みんな着物着たいんじゃん!
忘れもしない1月初春大歌舞伎観賞後の蕎麦屋にて、みんなで降りれば恐くない!とばかりにるんるん着物軍に下ったわけでございます。


こうして、先達の友人黒猫さんを隊長として半年後を目標に「着物で歌舞伎を観に行こう隊」が結成されました。
とは言えまだ完全に行けるのか、はたまた行けないのか全くの暗中模索状態。
自分が欲しい着物が何なのかもわからないのだからして。
とにもかくにも一度、着物を見にいってみようではないか、という話になりました。


出発前に「裄丈だけ必ず計ってくるように!」との指令を受ける。
へ?裄丈ってどこからどこまで?
首の後ろのぐりぐりの骨のところから、斜め下に腕をのばした、手首のぐりぐりまでが裄丈だそうですよ。メモメモ。
で、いそいそと向かったのは地下鉄銀座線京橋駅から徒歩5分の場所にある 「アンティークモール銀座」
ものすごく目立たない雑居ビルの3フロアに、和のアンティークから洋のアンティークまで様々なショップが出店しています。
古布屋さんがたくさん並んでいるのは2階。
樟脳の香りが立ちこめる静かなフロアに、小さなブースがたくさんあり、それぞれのお店なりに特色のある布が重なって並んでいます。


しかしながら、積み重なった布を見ても、何が何やら全く分からない!
これは着物?帯?触ってもいいの?どれなら着られるの?
おそるおそる好きな色みの布をぴらっと返してみても、脳が機能しない。
パニ〜〜ック!


すると 「灯屋2」というお店で隊長が店員さんに私たちの趣旨を説明し、お勧めを選んでほしいと話を付けてくれました。
なるほど、呉服屋さんでは店員さんとのコミュニケーションが大事なのだな、と一つ勉強。
歌舞伎見物なら、お遊びだからだいたい何を着ても大丈夫。
でも木綿や浴衣ではくだけ過ぎ。
紬でもいいけど大きな格子柄のものはちょっと不似合い、等々。


そうはいっても先ずは好みの柄を羽織ってみましょうよ、とサイズが合いそうなものを物色。
私は洋服では絶対選ばない色、くすんだピンクの江戸小紋
(後から知りましたが、その柄は鮫小紋でした。)
友人は黄土色のチェックの絣を選んで初めての試着です。
着物って洋服と違って試着も大ごとです。
靴を脱いで畳に上がって、半襟帯とでもいうのでしょうか不思議なものを首につけてもらい、もうなすがままに着物を着付けていただく。
その手際のいいこと!
こうやって買うか買わないか分からない客にも、ちゃんと着物を着せてくれるんですね。
うう、着物屋さんて大変だ。