その22  そして当日!(後編)

遂に着物で歌舞伎座に辿り着いた私たち。
4月夜の部の仁左衛門丈の演目は「郭文章」。
吉田屋の伊左衛門を演じる仁左衛門に向かって、心の中でかなり大声で
「孝夫!あたしとうとう着物であなたに会いにきたよ!!」
と叫びました。
涙が出るほど感激!


仁左衛門の廓文章は何度か観ていますが、今回は本当に隅々まで素晴らしかった。
放蕩三昧で勘当された、アホ道楽息子の役なのですが、彼が演じると指す手引く手にもえも言われぬ品と色気があって、恋狂いのおばかな仕草のかわいらしいこと。


あまりにも仁左衛門が輝きを放ち過ぎていて、相方の傾城夕霧を演じた玉三郎の存在感が薄れるほど。
もう誰が相手でもいいやってほど思うほどの素晴らしさでした。


出の花道で面あかりを差し出したり、途中二人に幇間がからんだりと、今まで見たことのない演出にもおやと目を見張りましたが、これこそが松島屋型の廓文章なのだそうです。
この上方歌舞伎の演出が、仁左衛門をあれほどまでに輝かせたのかもしれません。
幕見でもう一度観たいぐらいの舞台でしたよ。うっとり。


この日、無事に着物で歌舞伎座の夢を実現できたのは、へたれな私を叱咤激励して雨コートまで届けてくれた黒猫隊長のおかげでした。
しかも怪我の功名とでも申しましょうか、出来はどうあれ2、3回の練習で一人で着物を着て歌舞伎座に行くことができたのです。
「3回で着られるようになりますよ!」という呉服屋店員さんの甘いささやきは、あながち嘘でもなかったということです。
もちろんまだまだ練習しなくてはいけないことだらけですけどね。


さて、この雨天中止騒動で、実は参加者5名の中でただ一人洋服で参加となった隊員がおりまして、和服の中に洋服が一人の悲劇をまざまざと見せつけられました。
要するに、身軽なのでなんとな〜く全員の使いっぱになってしまうわけです。(笑)
次回は全員無事着物で、参加したいものです。


もう歌舞伎座には、洋服でなんて行けないよ!